信託財産 #07 よくわかる家族信託

 家族信託は、一部に遺言信託などの例外はありますが、ほとんどの場合信託契約の形で実行されます。日本の法体系には契約自由の原則がありますので、信託契約の内容は当事者が自由に決めることができます。

 また、信託行為を規定する信託法自体が非常に柔軟な制度運用を認めていることも、信託の設計に自由度が高いことの理由となっています。

 家族信託の内容は、法令に違反するものでない限り、当事者が自由に設計できるのです。家族信託が個々のご家族ごとのオーダーメイドとなっている理由です。

 家族信託のご提案をするのは私たち専門家ですが、実際に家族信託契約を締結して運用していくのはお客様ご家族自身です。ですから当然、お客様ご家族が一番納得できる内容で作成していただかなくてはなりません。

 神宮外苑司法書士事務所では、家族信託の組成サポートについてご依頼をいただいた際には、当事務所が持つノウハウをもとに、お客様との相談を繰り返しながら、契約当事者となる委託者、受託者、またご家族の皆様に納得いただける契約内容のご提案に努めております。ご依頼・ご相談をもとに、ご家族の課題を解決する最適な家族信託を設計していくわけですが、設計の一番最初の段階で考えるべき事項は、『信託財産』と『信託目的』です。

 今回は信託財産についてのご説明です。

信託財産とは

 信託法第3条には、①信託契約、②遺言信託、③自己信託という、信託を実行する3つの方法が定められています。3つの方法についての詳しい説明は、信託の種類(2) #05 よくわかる家族信託 をご覧ください。

信託法第3条(信託の方法)
 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

 法律の条文は相変わらず回りくどく読みづらいですが、よく読むと、いずれの条文の中にも同じ文言が含まれていることが分かります。

 上記の赤い部分を抜き出して並べてみると、全く同じ文言が含まれていることがわかります。

一 ・・・・・・・・・一定の目的に従い 『財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為』を』すべき旨の契約
二 ・・・・・・・・・一定の目的に従い 『財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為』を』すべき旨の遺言
三 一定の目的に従い 自己の有する一定の『財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為』を』自らすべき旨の意思表示

 つまり、信託は、『財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨』の、『契約』『遺言』『意思表示』で実行するということです。

 言い方を変えれば、信託は、『財産の管理・処分・その他の必要な行為』を行うことです。財産を管理処分等するわけですから、信託をするには、まず初めに管理処分すべき特定の財産がなければ話が始まりません。委託者の所有するどの財産を信託するのかが、すべての検討の始まりとなります。

信託できるもの

 信託において、託される財産のことを『信託財産』と呼びます。財産的価値のあるものであれば、原則どんなものでも信託することが可能です。

 逆に信託できないものとしては、生命、名誉など法律上の財産ではないものと年金受給権などの一身専属権が挙げられます。価値があっても人に譲渡できないもの、法律上譲渡が認められないものは信託財産とすることができません。

 なお、借金などの債務も信託することはできませんが、受託者が債務を引き受けることは可能です。例えば、信託事務の内容として建物を改築・新築などする際に、受託者が銀行から融資を受けるなどの場合に利用される仕組みです。非常に利用価値の高い仕組みですので、信託内融資についてはまた回を改めてご説明いたします。

信託財産の具体例

 財産的価値のあるもの、言い換えれば、金銭的価値に置き換えることができるものであれば、どんなものでも信託することが可能です。

例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 現金
  • 不動産(自宅、未利用不動産、収益賃貸不動産)
  • 自社の株式
  • 有価証券(上場株式、国債公社債などの投資資産)
  • 金銭債権などの債権
  • 動産
  • 知的財産権など

 中でも、実際に多くの家族信託において信託財産とされているのは、現金、不動産、自社の株式、有価証券でしょう。それぞれの信託財産ごとの組成例を見てみましょう。

現金の信託

 現金は、ほぼすべての家族信託において信託財産とされる種類の財産です。不動産や有価証券などをメインの信託財産とする場合、個々の財産管理のためには必ずある程度の現金が必要となりますので、メインの信託財産と併せて現金も信託します。他の種類の信託財産と組み合わせて利用されています。

 また、現金のみを信託財産とすることも可能です。現金のみの家族信託にも様々な利用価値があります。

 例えば、受益者の認知症対策として利用される仕組みです。また、すでに認知症を発症している配偶者のために、委託者の相続後に備えて管理を任せるなどの方法も有効です。

 さらに、親が亡くなったあとに残される障がいのある子のために、きょうだいを受託者として親の資産を預ける、いわゆる『親亡き後問題』の対策としても大きな効果を発揮します。

 現金の信託においては、受託者が信託の専用口座を使い、自分の財布とは別の預金で管理しますので、受託者の固有財産と混同してしまうことはありません。

不動産の信託

 不動産とは土地と建物です。類似のものとして借地権も家族信託の対象となります。家族信託で一番多く利用されている仕組みは、不動産を信託財産とする仕組みだと思われます。

 不動産には登記制度がありますので、信託財産となった不動産が信託により受託者に名義移転したことが、登記に記録されます。

 信託財産とする不動産には、利用状況により、『自宅不動産』、『未利用不動産』、『収益賃貸不動産』の区別が考えられます。

 『自宅不動産』であれば、所有者の高齢化による管理不全を防ぐためや、将来の施設入居費用に充てるための売却などが目的となります。

 『未利用不動産』は、管理・売却に加え、開発利用も目的となるでしょう。

 『収益賃貸不動産』の信託は、特に家族信託の威力を発揮する仕組みとして利用されます。賃貸経営を子などの次世代に円滑に移行させることで、家族の賃貸収入を途切れることなく、将来に向けて有効に活用し続けることが可能となります。

 なお、例外として、田畑などの農地は家族信託することはできません。農地の信託の受託者となることができるのは、農業協同組合等のみと定められているからです(農地法3条2項3号)。

自社の株式の信託

 委託者が経営する自社の株式を信託するメリットは、現社長の将来の認知症対策や円滑な事業承継にあります。

 社長様の年齢や会社の資産状況、後継者の属性など、個々の会社の事情に併せて、将来に向けたリスクヘッジとして、家族信託を設計・利用することができます。

 個々のご事情により、最もオーダーメイドの色が強く出る設計となりますので、実際に御社に利用できるのかなど、ご興味があればご相談下さい。

有価証券の信託

 投資資産として保有している有価証券も家族信託の信託財産とすることが可能です。

 有価証券の信託は、証券会社に預託している財産を受託者に移行するものとなりますので、証券会社との折衝・連携が必要です。近年、証券会社としても、顧客の高齢化や相続により継続的な取引が途絶えてしまうことに問題意識を持つようになってきました。解決手段として、家族信託による投資資産の移行を認める証券会社が増えてきています。

 今後、確実に増えていく分野の家族信託です。

 現状では、まだ実行できる専門家の少ない分野の家族信託でもあります。神宮外苑司法書士事務では、証券会社各社と連携して、すでに具体的事例を実行したノウハウを持っていますので、ご相談下さい。

まとめ

 そのほかにも、例えばペットを信託するなど、家族信託には信託財産の種類によって様々な利用価値があります。

 委託者が保有している財産のうち、何を信託するのか、それを信託することでどのような効果が得られるのか、という検討が家族信託組成の第一歩となります。

 さらに、その信託財産を家族に信託する目的は何か、という検討が必要です。信託財産信託目的の検討から家族信託の組成はスタートするのです。

 今回は信託財産に関するお話でした。信託目的については、また回を改めてご説明いたします。

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