信託の種類(1) #04 よくわかる家族信託

 神宮外苑司法書士事務所のブログをご覧いただきありがとうございます。

 これまでのよくわかる家族信託では家族信託の構造や登場人物など、基本事項の解説をして参りました。民事信託の仕組みの大枠の部分についてご理解いただけたものと思います。

 さて、上の文章にも出てきた二つの用語、『家族信託』と『民事信託』。どちらも目にしたり、耳にしたりする機会がありますね。これまでの回でも何度か、あえて説明もせずに並べて使ってきましたが、そもそも何が違うのか、気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。二つの用語にはどの様な違いがあるのでしょう。

 また『家族信託』と『民事信託』の他にも、信託の仕組みや性質に着目した各種の分類方法が存在します。今回は信託に関する分類、信託の種類のお話です。

信託の種類

 法律に限らず、どのような分野の話であっても、専門用語だらけの説明は分かりづらいですね。しかも専門用語の中には、非常に似通った言葉なのに、全く違う意味になるものなどもあったりします。

 しかし、対になる専門用語があるということは、対になる概念が存在するということです。用語の意味を正しく理解することで、その分野全体の理解も進んでいきますね。

 今回と次回のブログでは、信託に関する次の用語を比較解説いたします。

  • 商事信託』と『民事信託
  • 民事信託』と『家族信託
  • 信託契約』と『遺言信託』と『自己信託
  • 自益信託』と『他益信託

 今回は、①と②の説明です。用語の意味が分かれば、より一層、信託制度の概要を把握することができるものと思います。

『商事信託』と『民事信託』

 近年、『民事信託』とか『家族信託』という言葉を聞く機会が増えてきました。恐らくメディアなどにこの言葉が頻繁に出始めたのは2017年ころでしょうか。

 それ以前まで『信託』という言葉は、投資信託などの金融商品を指し示す用語として使われてきました。信託銀行などにお金を預けて、そのお金をプロに運用してもらうことで、将来運用益を受け取る、という商品が投資信託です。今でも『信託』と聞くと、この投資信託のことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 当時、信託と言えば金融商品と考えられていたのには理由があります。それまでの法律が、家族間などの個人的な信託に十分に対応していなかった、というのがその理由です。

 『信託法』は1922年(大正11年)の制定から長い間、信託会社が受託者となる『業としての信託』、つまり営利目的の信託の在り方を規制することを主眼としていました。他人から財産を預かって、その預かった財産を元手に運用をすることで収益を上げ、収益のうちの一定割合を報酬として受け取り、残りの収益を所有者に還元する、という図式が『業としての信託』です。

 この『業としての信託』が、現在では『商事信託』と呼ばれている信託です。この後説明する『民事信託』の対となる概念です。信託と言えば金融商品のことと考えられていたのは、そもそも日本の信託法制が今で言う商事信託ばかりに目を向けたていたから、というのが大きな理由であるわけです。

信託会社
 ちなみに、商事信託を受ける、つまり営利目的で信託の受託者となるには、国から免許を受ける必要があります。免許を受けた会社だけが、○○信託銀行とか△△信託株式会社などのように、社名に『信託』の文字を使うことができます。これらの会社を『信託会社』と言います。一般の個人や、信託会社ではない会社が、営利目的で受託者になることはできません。

 そのような中で、2000年代に入り、社会の高齢化に伴って自身での財産管理に支障をきたす事例が多く取り沙汰されるようになり、これが大きな社会問題となっていました。

 当時、判断能力が不十分なために財産を自分で管理できない人を支援する仕組みとしては、すでに成年後見制度が採用されていました。しかし、成年後見制度はあくまで本人の財産を護るための制度ですので、家族のための財産利用や積極的な資産運用など、より柔軟な方法での財産管理の承継という社会のニーズを満たすことができていませんでした。このニーズに対応するため、2006年12月に『信託法』が大きく改正されることとなります。改正と言っても、それまでの信託法制の在り方を根本から見直す、とても大きな改正となりました。

 この改正を受けて2007年9月に施行された現行の信託法は、業としての信託のみならず、信頼関係に基づく個人間での信託についての規定をしっかりと盛り込んだものとなりました。そして、この法制度の趣旨が実務業界に実際に浸透し始めたのが、『民事信託』という言葉をメディアが発信するようになった2017年頃であった、というわけです。社会の要請に対応した新しい信託法制の始まりが、民事信託普及のきっかけとなったのです。

 なお、『商事信託』『民事信託』という言葉は、正式な法律用語ではありません。金融商品としての信託と、個人間での財産管理の承継を目的とした信託とを区別する用語として、一般的に用いられている区別となります。

商事信託国から免許を受けた信託会社が営利目的で行う金融商品としての信託
民事信託家族などの個人間で信頼関係に基づいて財産管理を任せる信託

 神宮外苑司法書士事務所が扱う信託は、民事信託です。信託をするのはお客様ご家族自身です。当事務所では、お客様ご家族の財産管理に関する課題を解決するための最適なご提案や法務サポートをさせていただきます。

 投資信託など、商事信託については、信託銀行にご相談ください。

『民事信託』と『家族信託』

 『民事信託』という用語の意味はご理解いただけたかと思います。では、『民事信託』と並んでよく耳にする『家族信託』とは何を指す言葉でしょうか。

 『民事信託』が正式な法律用語でなかったのと同じく、『家族信託』という語も正式な法律用語ではありません。正確な定義もありません。もっと言えば『家族信託』の語は、一般的に利用できる用語ですらありません。どういうことかと言うと、実は『家族信託』の語は、一般社団法人家族信託普及協会さんの登録商標となっていますhttps://kazokushintaku.org/registered_trademark/)。

 メディア等で民事信託、家族信託が注目を集めるようになる少し前の時期に、家族間での信託の有用性にいち早く着目した家族信託普及協会さんが、『家族の家族による家族円満のための信託*』の正しい方法での普及を目的として、商標登録した語となります。

 登録商標とは言っても、普及協会さんのHPにもあるとおり、『家族親族でない方が「業として」信託を引き受ける商品名にこの言葉を使用するなど、一般の方々に誤解を与えてしまう使い方をされないこと*』が目的であり、『協会の趣旨を理解し、正しく「家族信託」の名称を使用される限り、そのご活動を制限するつもりは一切ない*』とのことですので、神宮外苑司法書士事務所でも『家族信託』の語を使用させていただいております。

 『家族信託』とは、『民事信託』のうち、特に『家族間』での財産管理対策という部分を重視して、主に高齢化対策などの福祉目的を主眼とした信託のことを指しています。『家族の家族による家族のための信託*』という意味ですね。

 一般的には、『民事信託』と『家族信託』は、ほとんど同じ意味で用いられているようです。業として行う商事信託と区別したい意図が強ければ『民事信託』と呼びますし、特に家族間で行うことを重視して説明したいときは『家族信託』と呼んでいることが多いでしょうか。具体的な仕組みの中身は全く同じものですので、『家族信託=民事信託』と考えていただいて問題はありません。

民事信託 = 家族などの個人間で信頼関係に基づいて財産管理を任せる信託
家族信託 = 民事信託のうち、特に家族間での財産管理対策という部分を重視した呼び方

 どちらの語を使用しても意味合いは大きく変わりませんので、神宮外苑司法書士事務所では、より分かりやすく親しみやすいイメージがある『家族信託』の語を使用しております。『ご家族のため』という目的に重点を置くという意味合いも含んでいます。

 当事務所では、ご家族の財産管理に関する課題解決を目指す予防法務を広く提供いたしております。家族信託のご利用をご検討の際は、是非一度ご相談ください。


 信託に関する用語のうち、①『商事信託』と『民事信託』、②『民事信託』と『家族信託』の違いについてのご説明でした。

  • 商事信託』と『民事信託
  • 民事信託』と『家族信託
  • 信託契約』と『遺言信託』と『自己信託
  • 自益信託』と『他益信託

 次回は引き続き、③『信託契約』と『遺言信託』と『自己信託』、④『自益信託』と『他益信託』についてご説明いたします。

(文中の*印は、一般社団法人家族信託普及協会HPから引用させていただきました。)

神宮外苑司法書士事務所は、

お客様に寄り添う

身近な法律家です。

認知症対策の最前線

家族信託は経験豊富な当事務所にご相談を。

相続を争続にしない

遺言は残される家族への最良の贈り物です。

想いに沿った老後に

もしもの時の財産管理は、家族に任せたい。