法定相続分 #02 基礎から知る相続のルール

 今回のコラムは、『法定相続分』のお話です。相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。相続人が1名だけであれば、被相続人の全財産をその1名が承継します。しかし、相続人が複数名いる場合には、誰がどの程度の割合で財産を承継すればよいのかという問題が発生します。そこで、相続財産の取得割合について、相続法の中には詳細な規定が存在しています。この法律上定められた相続財産の取得割合のことを『法定相続分』と呼びます。

 なお、前回のコラム 法定相続人 #01 基礎から知る相続のルール では、法定相続人について解説しております。こちらも併せてお読みいただくことで、法定相続分についての理解がより一層深まるものと思います。その中でもご説明しておりますが、法定相続人の組み合わせには次の7通りがあります。

  • 配偶者のみ
  • 子のみ(代襲含む)
  • 親のみ(祖父母等含む)
  • 兄弟姉妹のみ(代襲含む)
  • 配偶者と子(代襲含む)
  • 配偶者と親(祖父母等含む)
  • 配偶者と兄弟姉妹(代襲含む)

 それぞれの場合によって、法定相続分のルールが定められています。

 ※『代襲』とは、本来相続人となる者が被相続人よりも先に死んでいた場合に、次の世代の親族がその地位を引き継いで相続人となることを指します。

配偶者のみ

 配偶者はいるけれども、子供がなく、親や兄弟もいない場合は、配偶者のみが相続人となります。配偶者は1人しかいませんので、配偶者のみが相続人となる場合は、配偶者1人が100%の財産を承継します。

子のみ(代襲含む)

 子は配偶者と違い、複数名いる可能性があります。そこで、子のみが相続人となる場合は相続分の配分を検討しなければなりません。複数の子の権利は同等であると考えられますので、子のみが相続人となる場合の法定相続分は、子の人数により均等分割と定められています。2人なら1/2ずつ、5人なら1/5ずつ、という感じです。
 少々注意が必要なのは、離婚した前の配偶者との子なども人数に含むことです。配偶者との親族関係は離婚により解消されますが、親子においては、たとえ親権を失ったしても法律上の親子関係はなくなりません。
 また、実子と養子の区別もありません。相続開始の時に法律上の親子関係があった子全員で均等分割です。

 子が被相続人よりも先に亡くなっていた場合もあり得ます。このとき、亡くなっていた子に子供(被相続人の孫)がいなければ、亡くなっていた子は均等分割の人数には含めません。
 例えば、3人兄弟のうち長男が親より先に亡くなっていて、長男には子供がいなかったとすると、次男と三男の2名が1/2ずつの法定相続分となります。
 逆に、先死の子に子供(被相続人の孫)がいればこの孫も相続人となり、このように次の世代の親族が相続人となることを代襲相続と呼ぶのでした。
 先ほどの3兄弟の例で、長男に2人の子供がいたとすれば、2人の子供は長男が相続するはずであった1/3を人数均等分割の1/2ずつで承継します。つまり、長男の2人の子供は1/3×1/2=1/6ずつということになります。全体で考えれば、長男の子Aさん1/6、長男の子Bさん1/6、次男1/3、三男1/3という法定相続分です。
 代襲相続の場合の分割割合は、代襲される子(『被代襲者』と呼びます)の受けるはずであった法定相続分を代襲相続人の数で均等分割した割合ということになります。

親のみ(祖父母等含む)

 被相続人の相続開始時点で、両親のうち生存している人が1人であれば、法定相続分は100%です。両親ともに生存している場合は、均等分割の1/2です。
 両親とも先に亡くなっていて、祖父母が生存している場合もあります。このような場合は、祖父母4名のうち生存している人数での均等分割です。曾祖父母でも同様です。
 注意が必要なのは、両親のうち1名でも生存していれば、祖父母は生存していたとしても相続人にはならないことです。両親が先死していて、祖父母のうち1名以上が生存していれば、曾祖父母も相続人になりません。直系尊属への相続は、被相続人に一番近い親等の生存者による人数均等分割となります。
 なお、養子縁組により実親と養親がいる場合は、親が2名よりも多くなったり、祖父母が4名よりも多くなったりします。このような場合も、人数均等分割は変わりません。養親も実親と同等の相続権を持っています。

兄弟姉妹のみ(代襲含む)

 兄弟姉妹のみが相続人となる場合も、子や親の場合と同様です。人数均等分割で、代襲相続がある場合は被代襲者の法定相続分を均等分割します。
 『半血兄弟姉妹』がいる場合は注意が必要です。片方の親のみを同じくする兄弟姉妹、俗に言う『腹違い(異母兄弟姉妹)』『種違い(異父兄弟姉妹)』の兄弟姉妹を半血兄弟姉妹と呼びます。半血兄弟姉妹は、両親を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の1/2を承継します。
 例えば、全血兄弟姉妹が2名、半血兄弟姉妹が1名、合計3名の兄弟姉妹が法定相続人となる場合、全血Aさん2/5、全血Bさん2/5、半血Cさん1/5の法定相続分となります。半血兄弟姉妹の法定相続分が、全血兄弟姉妹の法定相続分の1/2になっていますね。
 また別の例で、全血兄弟姉妹が3名、半血兄弟姉妹が2名、合計5名であれば、全血各2/8、半血各1/8となります。こちらも半血兄弟姉妹の法定相続分が、全血兄弟姉妹の法定相続分の1/2になっています。
 全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹(腹違いや種違いの兄弟姉妹)がいる場合の計算は少々複雑なので注意が必要です。

配偶者と子(代襲含む)

 配偶者と子が相続人となる場合は、配偶者1/2、子1/2の法定相続分となります。このとき、子が複数名いる場合は子全員での法定相続分が1/2となりますので、1/2をさらに人数均等分割します。配偶者と子2名がいる場合、配偶者1/2、子A1/4、子B1/4という感じです。
 子に代襲相続がある場合は、子のみが相続人となる場合と同様に、被代襲者の法定相続分を代襲相続人の人数での均等分割です。

配偶者と親(祖父母等含む)

 配偶者と親が相続人となる場合は、配偶者2/3、子1/3の法定相続分となります。
 親、祖父母等が複数いる場合の考え方は、配偶者と子が相続人となる場合と同様です。

配偶者と兄弟姉妹(代襲含む)

 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合は、配偶者3/4、子1/4の法定相続分となります。
 こちらも、複数であったり代襲相続がある場合には、上の2つと同じルールで人数均等となります。全血、半血の関係性も兄弟姉妹のみが相続人となる場合のルールと同様です。

まとめ

法定相続人法定相続分留意事項
配偶者のみ100%
子のみ(代襲含む)人数均等分割代襲相続の場合は被代襲者の法定相続分を代襲相続人が人数均等分割
親のみ(祖父母等含む)人数均等分割
兄弟姉妹のみ(代襲含む)人数均等分割代襲相続の場合は被代襲者の法定相続分を代襲相続人が人数均等分割
半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の1/2
配偶者と子(代襲含む)配偶者1/2、子1/2子複数の場合は1/2の中で子のみのルールを適用
配偶者と親(祖父母等含む)配偶者2/3、親1/3親等複数の場合は1/3の中で親のみのルールを適用
配偶者と兄弟姉妹(代襲含む)配偶者3/4、兄弟姉妹1/4兄弟姉妹複数の場合は1/4の中で兄弟姉妹のみのルールを適用

 相続法に規定された法定相続分は以上のとおりです。

 ただし、法定相続分とは、あくまでも相続法に規定された相続割合であるということに注意が必要です。法定相続分は、実際の相続の際に、相続人が自動的に取得する相続財産の割合を意味しているわけではありません。

 法定相続分とは実際の遺産分割において参考とされる相続割合という意味合いのものであって、何の手続きもせずに、法定相続分のとおりに遺産が自動的に分割されるというものではないのです。

 この点については、以前のブログ 法定相続分での分割は絶対なのか で詳しく解説しています。こちらも併せてお読みください。

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